「さらば、よつばと!」 現実が憧れを追い越す
よつばと!
ぶらりと立ち寄ったコンビニのコミックコーナーに「よつばと!」の14巻が置いてあった。
おー、連載再開したのか~
そんなことを思いつつ、何巻まで読んでたっけ?と確認してみたら13巻も未読であった。
よつばと! 14巻 発売日2018年4月28日
よつばと! 13巻 発売日2015年11月27日
よつばと! 12巻 発売日2013年3月9日
2年半ぶりの新刊かよ!
だんだん発刊ペース落ちてるな!
そんなことを考えながら、仕事中であったが(昼休みだったんですよ!)未読の13巻と14巻を読んでみた。
違和感を覚えずにはいられない
多分、5年ぶりのよつばと!である。
主人公のよつばは相変わらず可愛いし、新キャラの婆ちゃんも妹も良い感じであった。
各エピソードもそれぞれ楽しめた。
だが、読み進めていくに連れて違和感を覚える自分がいた。
私は多分、主人公のよつばに違和感を覚えずにはいられなかったのだ。
主人公のよつばは5歳である。
来年から小学生。
ナルトモと普段よく遊んでいる近所のミクト君や、アイちゃんと同じ年齢だ。
ミクト君はやんちゃ坊主で少し多動な部分もあるが、元気な男子である。
アイちゃんは4人姉弟(女女男男)の次女で、しっかりものだ。
そんな5歳を実際に見て、接しているからであろうか。
主人公のよつばに違和感を覚えずにはいられなかったのだ。
ファンタジーの終わり
思えば、よつばと!を読み始めたのは、まだナルトモが生まれる前どころか、マコと出会ってすらいない独身の頃だった。
あの頃の私から見た『よつば』は無邪気で、やんちゃで、少し困ったところもあるけれど、可愛い少女であった。
理想の『子供像』だったのかもしれない。
理想の『家族』や『生活』をそこに見たのかもしれない。
だが時は流れ、ナルトモが生まれ、結婚と育児の現実の中で生きて、『よつばと!』の世界がファンタジーだと心の底から理解できたのであろう。
『よつばと!』の世界は空想の産物である。
誰もが優しく、愛に満ちた理想の世界だ。
かつての私は『よつばと!』を通して、自分の子供や家族に憧れた。
だが今、現実が憧れを追い越してしまったのだ。
あの頃、あれだけ魅力的な存在であった『よつば』よりも、元気で煩くクソめんどくさいナルとトモの方が圧倒的に可愛いのだ。
さらば、よつばと!
『よつばと!』の魅力は何も損なわれてはいない。
変わったのは私である。
現実は厄介な仕事と、面倒な家事と、大変な育児に追われる日々だ。
仕事ではボスの不条理な命令に憤ったり、マコと喧嘩したり、言うことを聞かないナルトモにイライラしたりもする。
毎日、子供たちにご飯を食べさせるのにも一苦労。
「あしたなにしてあそぶ?」はリアルの世界の出来事であり、近所の子供たちとまとめて遊ぶ週末はある意味で地獄のような天国である。
相変わらず自分自身の時間なんてほとんど無い。
かつて思い描いた理想とは、未だ程遠い。
それでも。
それでも、私は心の底から幸福なのだと思う。
かつて、エレカシのSweet Memoryというアルバムが大好きでよく聴いていた。
「俺は、俺が、俺には」
一人称『俺』で歌われる青春と、過ぎ去った青春への憧憬。
これも、久しぶりに聴いてみたら遠い世界の話になってしまっていた。
私はもう『俺』とばかりは言っていられないのだ。
さらば、青春。
さらば、よつばと。
少し寂しくも思うが、生きるってのはきっとそういうものなのだろう。